私を構成する9枚(パート2) [音楽]
①→③
④→⑥
⑦→⑨
今回はパート2として、④から⑥を紹介します。
④Three Quartets/Chick Corea(1981)
暗さの中に独特の存在感がある、なんとも言えぬ輝きのあるアルバムです。
Chick Corea、Michael Brecker 、Eddie Gómez、Steve Gaddと当代一流の4人が、このアルバムで強烈に個性を主張しています。とても暗く重苦しい演奏ですが、孤高ともいえる、他に代え難い存在感がある1枚です。
このアルバムの音楽を決定付けているのは、何と言ってもSteve Gaddのドラミングです。4ビートながら全くスイング感のないドラム。ある意味で楽しさを感じさせないGaddの、とてもパワフルなドラムが、このアルバムの音楽を支配しています。
そして、Steve Gaddのドラムの上に重なるChick Coreaのピアノ、Michael Brecker のテナー、Eddie Gómezのベースは、全く黒っぽさや汗を感じさせることなく、クールで重々しい演奏を繰りひろげ、ちょっと不健康な、極めて個性的な味わいと響きを持つアルバムとなっています。
このアルバムを入手してから早35年、ちょっと気合を入れてJazzを聴きたいときに、必ず手にする1枚。黒っぽい背景に線香花火のような花のイラストが描かれたジャケットが、このアルバムの音楽によくマッチしていて、こちらも秀逸です。
聴き終わったあとの、ずっしりとした手ごたえ(聴きごたえ?)が、私にとってこのアルバムを特別な、格別な存在としています。
⑤In Concert, Zürich, October 28, 1979/ Chick Corea: Gary Burton(1980)
私の人生を通して、最も聴いた回数が多いアルバムの中の1枚になります。
Chick Corea:Gary Burton のデュオのアルバムは、このアルバム以前にスタジオ録音が2作ありましたが、私はこのアルバムで初めて彼らのデュオの演奏に接しました。
LP2枚組のこのアルバムが、1980年のスイングジャーナル誌ジャズディスク大賞を受賞したことを知り、日本盤発売直後に購入しました。まだ、ECMレーベルが、日本ではTRIOレコードから発売されていた時代です。
アルバムの冒頭1曲目の"Señor Mouse"を初めて聴いた時の衝撃は忘れられません。腰が抜けると言ったら大袈裟になりますが、それくらいのインパクトでした。音楽、Jazzに対する私の観念を一変させるくらいの驚きと圧倒的な素晴らしさでした。
Chick Corea: Gary Burtonのインタープレイは、時には激しく攻撃し合い、時には優しく包み込むように、変幻自在で色彩豊かな音を溢れるように生み出し、まさに息をのむ感動です。
2つの楽器によるデュオの魅力の極限を聴くことができる、まさに名盤です。
「In Concert, Zürich, October 28, 1979」を聴いた衝撃さめやらぬ、翌年2月、 Chick Corea: Gary Burtonが来日しました。私はJazzを愛する大学の友人と一緒に、浜松町の郵便貯金ホールのコンサートに出向きました。当日はNHKがコンサートの模様を録音・録画していました。
実際に生で観たChick Corea: Gary Burton、想像を遥かに超える素晴らしさでした。神業のごとく4本マレットを駆使してヴィブラフォンを奏でるGary Burtonのテクニックの超絶さ、溢れ出るサウンドに魅了されました。Chick CoreaはGary Burtonのその姿を愛おしむように見つめつつピアノで応え、2人の息の合った、かつ緊張感のある対話は心を打ちました。
"Señor Mouse"は「In Concert, Zürich, October 28, 1979」に収録された演奏とくらべると解放感に満ちていて、耳を傾けて聴き入りたくなる演奏というより、音楽が根源的に持っているダイナミズムがストレートに感じられる、より魅力的な演奏でした。
アンコールで演奏された名曲"La Fiesta"。アンコールの場面では、ステージの背景の照明がオレンジ一色に変わり、Chick Corea: Gary Burtonはステージのオレンジの照明と同化するがごとく、燃え上がるように情熱的な演奏を繰り広げ、会場の空気の熱さも頂点に達しました。
"La Fiesta"が終わったあと、観客は総立ちでスタンディングオベーション、まさに拍手の鳴り止まないコンサートでした。私が今まで観たなかのベストのコンサートの1つとして、記憶に深く刻まれています。
このコンサートの模様はNHKで放映され、さらにその放映内容がほぼそのまま、パイオニアから「クリスタル・ブレイク チック・コリア,ゲイリー・バートン」というタイトルでLD(もはや知らない人がいるかも?)化されました。
私は、このLD1枚だけが見たいがために、当時、定価249800円だったパイオニアのLD/CDコンパチブル・プレイヤーCLD-9000 を購入。脚色を排して淡々とコンサートの模様を伝えるこのLDで、素晴らしいこのコンサートの感動を繰り返し蘇らせることができました。
話を「In Concert, Zürich, October 28, 1979」に戻すと、現在発売されているCDはアナログのLP2枚組のアルバムから、Chick Corea: Gary Burtonのソロ各1曲がカットされています。カットされているソロの演奏もデュオの演奏となんら遜色ない魅力的なもので、できればリリース当初と同じ構成でのフルCD化をレコード会社に望みたいです。
⑥Blanchard: New Earth Sonata/ Hubert Laws: Quincy Jones: Chick Corea(1985)
ClassicalレーベルのCBS Masterworksからリリースされたアルバム。 Classical MusicとJazz/Fusionのクロスオーバーと言える内容のアルバムです。
初めてこのアルバムの楽曲を聴いたのは、アルバムリリース直後のFM番組でした。”New Earth Sonata”第3楽章がチューナーから流れたのを聴いて、Hubert Lawsのフルートの音色の瑞瑞しさ、Chick CoreaのきわめてJazzyなピアノソロ、William Kanengiserのギターの素朴な美しさ、あくまでもJazzを主張するBob Magnussonのべース、そして Harold Blanchard の作曲した楽曲の耽美的な美しさなど、瞬時に私はこのアルバムに魅了されてしまいました。直ぐに、レコード店にCDを買いに走ったことは言うまでもありません。
因みに今回挙げた9枚のなかで、唯一、アナログ(LP)を所持せずに、CDフォーマットのみを所持しているアルバムとなります。
”New Earth Sonata”以外の収録曲、”Telemann: Suite In A Minor For Flute & Strings ”、”Amazing Grace ”も素晴らしいですが、”New Earth Sonata”の魅力は圧倒的です。季節が織りなす自然の風景の移ろいを見るように、3つの楽章が全く異なる表情を見せてくれるのが、この楽曲の魅力です。
それぞれの表情は、Classical Musicが持つ、吟味して絵具を重ねたような色彩感と、Jazzが持つ、刹那的な色彩感の両方により生み出されています。これらの色彩感が織りなす不思議な美しさが、私にとってこのアルバムを掛け替えのない1枚としています。
このアルバムを手に入れたことが、それまで毛嫌いしていたClassical Musicへの扉を開くきっかけの1つとなり、私の音楽人生の転機となった1枚ともなります。
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チック・コリア、ジャズに疎い私でもその名を知っています!
素晴らしいピアニストというかアーティストですね(o^^o)
by saia (2016-03-18 17:29)
Chick Corea & Gary Burtonのデュオは私も愛聴盤です♪
スタジオ盤の方ですが、特にDUETの1曲目はいつも鳥肌立てて聞いています!
by またじ (2016-03-18 18:27)
saiaさま、こんにちは。
Chick Corea、私が最も好きなピアニストの一人です。記事に書いたコンサートのあと、私が20代の頃はChick Coreaが来日する度にコンサートに行ってました。
様々なスタイルのJazzで、素晴らしい音楽を聴かせてくれる、まさに天才アーティストですね!
by 芝浦鉄親父 (2016-03-20 09:36)
またじ様、こんばんは。
「DUET」は「In Concert, Zürich, October 28, 1979」を聴いてから、数年後にアナログ盤を購入しました。
これも、もちろん素晴らしいです。そして蝶をモチーフにしたジャケットの美しさも、演奏を引きたてていますね!
by 芝浦鉄親父 (2016-03-20 20:23)