至上の愛 [音楽]
私が初めてジャズ喫茶に足を踏み入れたのは、高校3年の時でした。
私が通っていた都立高校から23区内の都立高校に転校した、小説家志望だった悪友(?)が新宿歌舞伎町にあった「ポニー」に私を連れて行ったのが、私のジャズ喫茶デビューでした。
その小説家志望だった悪友は、来年で半世紀の付き合いとなる私の友人も「ポニー」に連れて行っていました。そして、私と半世紀の付き合いとなる友人と二人で「ポニー」に顔を出すようになりました。当時の私はロック命でジャズには関心がありませんでしたが、「ポニー」の大人の雰囲気はとても好ましいものでした。
19歳の時、半世紀の付き合いとなる友人と「ポニー」を訪れていた時、私の目をロックからジャズに向けさせる決定的な体験をします。この体験については、以前、記事に記しています(↓)。因みに小説家志望だった悪友とは疎遠になり、現在は消息不明です。
https://shibatetsu.blog.ss-blog.jp/2020-03-09
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私が二度目に入学した大学は、当時ジャズの街と言われていた吉祥寺にありました。学科の同級生で仲良くなった友人の5名程が、ジャズやフュージョン(クロスオーバー)のアマチュアバンドをやっていました。
私はそんな連中とジャズ喫茶に入り浸りの日々でした。そして、私語厳禁のリスニングルームのようなジャズ喫茶にも独りで、日参するようになりました。一日に2軒のジャズ喫茶を訪れることも多かったです。
これだけジャズ喫茶に出入りしていたので、John Coltraneのアルバムを数多く聴いたはずですが、Coltraneの演奏に耳を傾ける、感銘を受けたことはありませんでした。はっきり言ってColtraneは私の興味の対象からは外れていました。
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そんな私が、初めてColtraneの演奏に深い感銘を受けたのは、大学からの帰りに武蔵小金井駅北口の開かずの踏切のすぐ近く、小金井街道沿いの古本屋の2階にあったジャズ喫茶(店名失念)で、「Interstellar Space」を聴いた時でした。
Coltraneが興味の対象外だった当時の私は、Coltraneの音楽の変遷、1966年の来日時の記者会見で、“私は聖者になりたい” と語ったことは全く知りませんでした。
しかし、ColtraneとRashid Aliの火の出るようなデュオの演奏と鈴の音を聴いて、悟りを開いた人間が天上界で奏でる音楽が地上に響いているように聴こえました。そして、この強烈な演奏を聴いて何故か、“静寂” そして “無” という言葉が頭に浮かびました。店内のスピーカーの間に掲げられたジャケットの雲の上から夕日の写真、そしてアルバムタイトルの「Interstellar Space」(直訳すると星間空間)の文字を見て、この音楽は天高く、宇宙に通じているのかも知れないと思いました。
のちに、「Interstellar Space」は私の愛聴盤となり、今まで聴き続けています。
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私が最初に購入したColtraneのアルバムは「A Love Supreme」(邦題 : 至上の愛)でした。名盤中の名盤、モダンジャズの頂点と絶賛されていることが「A Love Supreme」を購入した理由でした。
しかし、「A Love Supreme」を聴いた印象は、「私の好みの音楽ではないなぁ・・・」でした。名盤と言われることは十二分に理解できましたが、私にとっては重すぎて、聴いていて暗澹たる気持ちになりました。そんな訳で「A Love Supreme」は私の愛聴盤とはなりませんでした。
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今年の10月、「A Love Supreme」のライヴ音源、奇跡の発掘と銘打って「A Love Supreme : Live In Seattle」がリリースされました。奇跡の発掘かどうかはさて置いて、「Ascension」以降、先鋭化したColtraneが「A Love Supreme」をどのように演奏しているか、このライヴ盤には大いに関心を持ちました。
しかし、Amazonなどのレビューで、あまりに音、録音が悪いと書かれていたことで「A Love Supreme : Live In Seattle」の購入を躊躇していましたが、先日、気を取り直して(?)購入して聴いてみました。
音源テープから相当手を入れていると思いますが、やはり音は満足できるものではありませんでした。
Elvin Jones(ds)が前に出過ぎて、Coltrane(ts)はElvinの向こう側、かなり遠くに聴こえます。Pharoah Sanders(ts)も遠いです。MaCoy Tyner(p)も、まあまあと言った感じです。
しかし、演奏はライヴの雰囲気ともども、素晴らしいものでした。内容が素晴らしいだけに、音が良くないことが余計に残念です。
オリジナルの「A Love Supreme」聴いた時のような暗澹たる気分にはなりませんでした。。。
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今でも頻繁に聴くColtraneのアルバムは「Interstellar Space」、「Selflessness」、「Coltrane at Newport」の3枚です。
今回、「A Love Supreme : Live In Seattle」を聴いて、この3枚以外、私が若き日々に愛聴したColtraneの諸作品を改めて聴き返してみたいと思いました。
もしかしたら、若き日々に聴いた時とは違う印象を受けて、私なりにモダンジャズの聖人John Coltraneの新たな魅力を発見できるかも知れませんから・・・
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A Love Supreme: Live In Seattle
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