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雛祭り [つれづれ日記]

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男の私にとって、雛祭りに何か特別な記憶はありません。そして私のただ一人の子も男、息子が幼いころに、端午の節句を祝ったことはありますが、無論、桃の節句を祝ったことはないです。

私の、雛祭りの記憶と言えば、昔、母が桃の節句には必ず、ちらし寿司を作っていたことくらいです。

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私は還暦を過ぎた今日まで、読んだ小説は純文学、大衆文学を合わせても、100冊にも満たないと思います。基本的に本を読むこと、字を読むことは好きではありません。

さいたまの自宅、大阪のワンルーム、東京多摩地域にある実家には、溢れんばかりの本がありますが、全て雑誌です。鉄道、鉄道模型、音楽、オーディオ、カメラ、熱帯魚、自動車、モータースポーツなどなどの雑誌が、昔から捨てることができずに蓄積されていく一方です。

字を読むことが好きではない私は、雑誌を買っても読む記事は限られます。そして、その限られた記事の読み方も、記事の一部分のみを切り取るように読み、記事を頭から終わりまでを読むことは稀です。

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先日、東京から新大阪に移動する新幹線の車内で読もうと、一冊の掌編小説が収められた文庫本をネットで購入しました。今になって、その作家の起こした事件に関心を懐き、ネットサーフィンしていたとき、この文庫本に収められた一編のWikipediaの作品評価をたまたま目にして、その作品を読んでみたいと思ったことが購入の動機です。私の記憶では小説の購入、そして小説を読むのも、おおよそ35年ぶりのことだと思います。

その文庫本は「三島由紀夫集 雛の宿」です。2月中旬、さいたまの自宅で文庫本に収められた幾つかの掌編を読んで、その続きを新幹線の車内で読むつもりだったのですが、自宅のリビングの机の上に置き忘れたまま大阪に戻ってしまいました。因みに、三島由紀夫の作品を読んだのは今回が初めてでした。

昨日の夜、さいたまの自宅に戻りリビングの机の上の本を見つけて、布団の中で読もうと枕元に本を置いて就寝。

今朝、遅い時間に目を覚まして、寝起きに布団の中でその中の一編を読みました。読んだ掌編は”雛の宿”。私は文学を語る造詣は全くもってはいませんが、奇妙な面白い物語でした。

3月3日、雛壇を見て家には男雛が居ないので雛祭りができないと嘆く少女の母親。少女は晩までに男雛を探してくると東京都心まで。数寄屋橋のパチンコ屋で僕と少女は出会い、母親が雛祭りの準備をする少女の家(雛の宿)へ。白酒に酔った少女と僕は共寝し、陶酔の一夜を過ごす。少女は翌朝、駅の改札口まで僕を送り、「いってらっしゃいませ」と言う。しかし、僕は二度と雛の宿を訪れることはなかった。その年の秋、僕は失恋をきっかけに雛の宿を訪ねるが道に迷い、近所の雑貨屋の主にその家の道を尋ねると、「あの色きちがい母子の家か」と言われ呆然とする。そして、雛の宿の前に立つと3月3日と変わらず雛壇が飾られ、母子も3月3日と同じ姿で同じ位置に座り、微動だにしなかった・・・・・

そしてこの作品を読んで、何よりも自分の興味を惹いた点は、雛の宿が中央線の武蔵小金井駅から歩いて行ける距離にある、堤、有名な桜並木の傍らにあると描かれていたことです。

私の実家(今は私の家ですが)も、中央線の武蔵小金井駅から歩ける距離にあり、堤、有名な桜並木からは遠くないところにあります。雛の宿と私の実家は、実は近所なのかもしれないと思えたことが、この掌編を読んでいて、私をとても奇妙な気分にさせてくれました。

掌編”雛の宿”の初出はオール讀物1953年4月号で、まだ私が生まれる前のこと。堤、桜並木から、そんなに遠くない実家に住み始めたのが1966年なので、それよりも13年前のことです。

3月3日の晩、武蔵小金井駅から"雛の宿”に向かう僕と少女が、堤、桜並木の方角に肩を並べて歩く様を思い浮かべて、私が22年間両親と暮らした実家周辺の戦後間もないころの、いにしえの情景と空気感を感じ取ることができたような気がしました。

布団の中で”雛の宿”を読み終えて、リモコンでテレビのスイッチを入れてニュースにチャンネルを合わせると、今日は3月3日、桃の節句、雛祭りであることに気づきました。3月3日だからと意識して”雛の宿”を読んだわけではなかったので、このことも少し私を奇妙な気分にさせてくれました。

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今回、久々に小説を読んでみて、本を読むのも良いものだと思いました。しかし、この先も、私が熱心に本を読むことはなさそうな気はしますが・・・・・

そして、玉川上水の堤の桜並木(桜堤)、私が初めて目にしてから半世紀以上経ちましたが、年月を経てもあまり雰囲気は変わっていないようにも思えます。いつもクルマを運転して五日市街道を走るたび、変わらぬ堤の風景を眺めると、小学生のころに戻ったような懐かしい気分にさせてくれます。


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