転機となったレコード [音楽]
昨夜、クルマを運転しながら、ピーター・バラカンさんのFM番組を聴いていました。
その番組で、ジャズ・ピアニストの巨匠、マッコイ・タイナー(McCoy Tyner)さんが亡くなったことを知りました。
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ティーンエージャーの頃の私には、いわゆる洋楽、ロックが命でした。日本の歌など、他のジャンルの音楽には、全く見向きもしませんでした。
そんな私を、ロック以外に眼を向けさせたアーティストがマッコイ・タイナーでした。
その当時、今でも付き合いのあるロック好きの高校時代からの友人と、新宿歌舞伎町にあるジャズ喫茶「ポニー」によく行ってました。その頃は、私も友人もジャズには全く関心はなく、知識もなかったのですが、この店の大人びた、落ち着いた雰囲気は、私と友人にはとても居心地がよいものでした。
ティーンエージャー最後の年のある日、その友人と「ポニー」でコーヒーを飲んでいると、レコード屋さんが数枚の新譜と思われるレコードを届けにきました。早速、その中の1枚のレコードのシールが切られて、再生されました。
そのレコードの1曲目(タイトル曲)を聴いたことが、私と友人、共に、音楽との付き合いにとって、大きな転機となりました。
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ストリングスをバックにした圧倒的にパワフルでスリリングな演奏を聴いて、私と友人は、ロックとは比べ物にならない圧倒的なエネルギーだと、興奮気味に語り合ったことを今でも記憶しています。まさに衝撃でした。
友人は席を立って、スピーカーの間に掲げられていたレコードジャケットを見に行き、マッコイ・タイナーの「フライ・ウィズ・ザ・ウインド」(Fly with the Wind))であることを知りました。
それから程なくして、友人が「フライ・ウィズ・ザ・ウィンド」を買ったという話を聞き、続いて私も輸入盤を買いました。そして、擦り切れるくらいに「フライ・ウィズ・ザ・ウインド」を聴きました。
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それが、私がジャズを聴くようになったきっかけです(その友人にとっても)。そして、私が20代の時代、今の自分では信じられないくらいジャズに心酔していました。ひと月に30枚以上のアルバムを買うこともしばしばでした。今ある4桁枚数を超えるのアルバムの70%近くは、ジャズだと思います(残りはロックとクラシックが半々くらいずつ)。
「フライ・ウィズ・ザ・ウインド」、冒頭のチェロからヒューバート・ロウズのフルート、そしてハープが重なり、雄大、壮大なテーマへと連なる導入部分に続き繰り広げられる、ビリー・コブハムのドラムとマッコイのピアノの力感みなぎる演奏は、鳥肌が立つくらいの迫力です。ヒューバート・ロウズのフルートも攻撃的で激しく、ロン・カーターのベースも重量感、力感に溢れています。
その頃の私にとって、「フライ・ウィズ・ザ・ウインド」はオンリーワンのジャズ・アルバムとなりました。今から44年も前の話となります。
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私はマッコイ・タイナーのリーダー・アルバムは「フライ・ウィズ・ザ・ウインド」の他は、「トゥゲザー」(TOGETHER)、「フォータイムス・フォー」(4 X 4)しか持っていません。
持っているアルバムの数は、ジョン・コルトレーン・カルテットでマッコイ・タイナーが参画しているものが、圧倒的に多いです・
とりわけ、1963年のニューポート・ジャズ・フェスティバルでエルヴィン・ジョーンズに代わりロイ・ヘインズがドラムを叩いた、妙な緊張感がある「マイ・フェバリット・シングス」のジョン・コルトレーンとマッコイ・タイナーの演奏がとても好きです。
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今年の正月に、その友人との新年会の時に、「ポニー」、そして「フライ・ウィズ・ザ・ウインド」を聴いた時の昔話に花が咲きました。
私はここ数年はロックに回帰(?)していてジャズはあまり聴かなくなりましたが、今回、マッコイ・タイナーさんの訃報を聞いて、再びジャズを聴きたいという灯が、心の中にともりました。
そして、この記事を書いている途中にネットで検索してみると、「ポニー」は閉店したとのことです。寂しいですねぇ・・・・・・
どんどんと青春時代が遠ざかり、歳を取っていく自分がとても悲しくもあります。。。
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好きなピアニストでした。The Real McCoyが良かったし、キース・ジャレットとの共演も素敵でいした。ご冥福をお祈りいたします。
by gillman (2020-03-10 16:16)
レコードがあるのがすごい! うらやましい!
by 森田惠子 (2020-03-10 18:07)
gillmanさん、こんばんは。
私が音楽に関心を持ったのは、ザ・ビートルズ、それはロックとの出会いでした。それから6年後に出会ったのがマッコイ・タイナー、ジャズとの出会いとなりました。
私に音楽の楽しさを教えてくれた、これらの出会いに恵まれたことは、幸せなことだと思います。
マッコイ・タイナーさんのご冥福を心より、お祈りします。
by 芝浦鉄親父 (2020-03-10 20:00)
森田惠子さま、こんばんは。
大半がジャズですが、アナログ・レコード、山ほどあります。
最後にアナログ・レコードを買ったのは33年前ですが、未だに一度も聴いていないレコードが沢山あります(まあ、CDでも聴いていないのがありますが)。
私は、音楽を聴くことには気力が必要だと思うのですが、歳とともに、気力が低下しているのかも知れませんね。
by 芝浦鉄親父 (2020-03-10 20:07)
こんばんは
44年前というと私も歌舞伎町の「木馬」によく出入りしていました。
当時、ジャズ喫茶巡りをしていたのですが、「ポニー」は見つけられなかったみたいです。
マッコイ・タイナー亡くなったんですね。81歳、想像より若かったんだと思いました。
by そらへい (2020-03-10 21:42)
フライ・ウィズ・ザ・ウインド、知らなったので、芝浦鉄親父さんの解説を読みながら聞いてみました。
速い、速い、チェロで始まり、、ピアノ、迫力がありますね。その昔、夢中になったというのがわかります。
by TaekoLovesParis (2020-03-10 22:30)
そらへい様、こんばんは。
私は「木馬」には、残念ながら行ったことがないです。
「フライ・ウィズ・ザ・ウインド」との出会いから2年後に、私が二度目に入学(?)した大学が、ジャスの街、吉祥寺にありました。
そんなわけで、大学四年間、吉祥寺の数多くのジャズ喫茶に入り浸りでした。特に、シーメンス・オイロダイン、マッキントッシュXRT20が爆音で鳴っていた、初期の頃の「アウトバック」、JBL4520とアルテックA7が品の良い音を聴かせてくれた「A&F」が、お気に入りの店でした。
「ポニー」と吉祥寺のジャス喫茶以外ではJBL4560が鳴っていた、高田馬場の「イントロ」くらいしか、行ったことがないです。
こんなコメントを書いていると、久々にジャズ喫茶に行きたくなってしまいます。
by 芝浦鉄親父 (2020-03-11 20:12)
TaekoLovesParisさま、こんばんは。
私の記事を読まれて、「フライ・ウィズ・ザ・ウインド」を聴かれたとのこと、とても光栄に存じます。
私は、「フライ・ウィズ・ザ・ウインド」を聴くたびに、音楽が本質的、根源的に持つダイナミズムが、音楽にとって何よりも重要であることを、気付かせてくれるようも思います。
音楽に夢中になる心、いつまでも大切にしたいです。
by 芝浦鉄親父 (2020-03-11 20:27)
こんばんは。
私はQueenに出会う前は、ジャズに凝っていて、結構たくさんのCDを持っていました。いつも聞いていました。マッコイ・タイナーも好きです。ジャズのCDをどこかにしまっていて場所がわからなくなったので、明日探そうと思います。(コロナ騒ぎでちょっと時間ができました)クリフォード・ブラウン、ビル・エヴァンスなども好きなプレイヤーです。
by coco030705 (2020-03-11 23:34)
coco030705さま、こんばんは。
私はロック、ジャス、クラシック、民族音楽、イージーリスニング、ニューエイジ・ミュージックなどなど、日本の歌以外の様々なジャンルの音楽を聴きます。まあ、最近、よく聴くのはロック、特にクイーンなのですが・・・
しかし、4年前のブログ記事「私を構成する9枚」に記したように、私の中核を構成する音楽は、実はジャズなのかも知れません。
クリフォード・ブラウンのアルバムは数枚しか持っていません。
ビル・エヴァンスは大好きです。最も多くのアルバムを持っているアーティストの一人です(他に多いのは、マイルス、コルトレーン、チック・コリア)。
ところで、不謹慎な発言かもしれませんが、クイーンの来日コンサート、コロナ騒動の直前で、今となっては良かったと思います。
by 芝浦鉄親父 (2020-03-12 20:26)
こんばんは。
ほんとにこの時期にいうのもなんですが、クイーンのコンサートが中止にならなくてよかったですね!Queenコンサートの記事を書きたいのですが、ちょっと控えてます。騒ぎが収まったらアップするつもりです。
by coco030705 (2020-03-12 23:38)
coco030705さま、こんばんは。
是非、折を見て、京セラドームの熱狂を伝える記事をアップしてください。楽しみにしています!!
by 芝浦鉄親父 (2020-03-13 20:02)
こんにちは>^_^<
雨が終日・・
テレビはコロナ
なんとも沈鬱な一日
この夕刻になりウイスキーを飲みながらブログを拝見していました
今は LED ZEPPEIN を聴いています
つれにマッコイ・タイナーさんが亡くなったことを伝えました
若いころ音楽に詳しかったので自分以上に感慨深いようです
いろいろとご紹介くださりありがとうございます
少し家の中に話の花が咲きました(^^♪
by らしゅえいむ (2020-03-14 16:12)
らしゅえいむ様、こんばんは。
私の記事が、話の種になったとのこと、とても恐縮に存じます。
憂鬱なニュースしか流れず、日常生活が一変してしまった、今日この頃、、、美味しいお酒と素晴らしい音楽は、最良の気分転換かもしれませんね。
by 芝浦鉄親父 (2020-03-15 20:25)
「フライ・ウィズ・ザ・ウインド」…LPを持っており今でも時々聴いています。
私もマッコイ・タイナーは最も愛すべきアーチストのひとりですので訃報が残念でなりません。
ご冥福をお祈りします。
by NO14Ruggerman (2020-03-25 18:06)
NO14Ruggermanさま、こんばんは。
今でも、タイトル曲のテーマを聴くと、胸が躍ります!
そして、LPのジャケットを手にして眺めていると、44年前の出会いの記憶が甦ります。
私がジャズに心酔していた時代に活躍していたアーティストが、また一人、この世を去ってしまいました。寂しい限りです。。。
by 芝浦鉄親父 (2020-03-26 19:51)